2000年12月21日に，ドリームキャスト用ソフトとして発売された「ファンタシースターオンライン」（以下，PSO）は，2012年に続編「ファンタシースターオンライン2」（PC / PS4 / Switch 以下，PSO2）のサービスが開始。今年の6月には，最新作「ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス」（PC / PS4 / Switch 以下，PSO2：NGS）の正式サービス開始も予定している。

　昨年には，シリーズを20周年を迎えたこともあり，4月24日には，それを記念したオーケストラコンサート「シンパシー2021」が開催される。「PSO2　RMT」
 

「PSO2」サウンドディレクター・小林秀聡氏

　そこで今回は，「PSO2」のサウンドディレクターで，「PSO」以降のシリーズにおいては，ほぼすべての音楽を手掛けてきた小林秀聡氏に，「PSO2」の楽曲と過去のシンパシーの思い出，そして今回のコンサートの聞きどころを伺ってみた。
 

「ファンタシースターオンライン2」公式サイト

  「PSO2」の楽曲における各エピソードごとの思い出

4Gamer：
　本日はよろしくお願いします。早速「シンパシー2021」の聞きどころをお尋ねしたいところですが，まずは，先日のアップデートでエピソード6までのストーリーが完結した「PSO2」の楽曲についてお話を伺いたいです。
　各エピソードごとに，曲やそれに関する思い出深い出来事をなどを教えてください。

小林秀聡氏（以下，小林氏）：
　まずテーマ曲を作ったことが自分の中で一番思い出に残っていますね。秋葉原で実施したファンブリーフィングで，初めてオープニングムービーを流したんですが，そこで「『PSO2』の音楽，テーマ曲はこんな感じです」といった気持ちで発表したことは，今でもよく覚えています。「PSO2　RMT」

4Gamer：
　2011年のクリスマスイブに開催されたイベントですよね。たしか，最初のαテストが終わった頃で，ゲーム内の曲のいくつかが，すでに公開されていました。

小林氏：
　そうですね。それらを含んだ，エピソード1から3までの曲で，「PSO2」の音楽における基本の形を作ってこれたかなと思います。
　「PSO」っぽい音楽を作ろうとするなか，さらにプラスも必要であると感じ，オーケストラ要素を加えるなど，スケール感じの大きさを出すようにしました。特に，エピソード3の“採掘基地防衛戦”は，「PSO」の特徴であるシンセサイザーの音と，オーケストラの迫力をミックスしたような音楽に，うまく形作ることができたのかなと。「PSO2　RMT」
 

4Gamer：
　エピソード4は，舞台を地球に変え，音楽もボーカル曲が多く登場しました。こちらは，エピソード1から3とは違ったテーマになるのでしょうか。

小林氏：
　エピソード4のテーマが“新体験”でしたので，音楽もそのテーマにあわせました。それまでは，通常のフィールドにボーカル曲を入れたことがなかったので，アップデートで追加される“東京”と“ラスベガス”は，両方ともボーカル曲にしたいなと思ったのです。また，東京の昼は，シリーズでは初の日本語ボーカルにも挑戦しました。「PSO2　RMT」
 

4Gamer：
　開発側から「ボーカル曲を入れてくれ」といったオーダーがあったのですか。

小林氏：
　開発からではなく逆にこちらからチャレンジをしたい，とお願いしました。コンサートのタイトルにもなっている，「PSO2」のサウンドシステム“シンパシー”は，短い曲をランダムでつなぎ合わせて長いひとつの曲にできるものなんです。
　これによって，実はプレイヤーごとに，同じようで違う曲を聞きながらプレイしていることになるのですが，違和感のないようなつなぎ方をしますので，サントラなどと聞き比べない限り，あまり気が付かないんですよね。「PSO2　RMT」
 

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　ただ，ボーカル曲ですと，歌詞の組み合わせによっては，違和感を覚えることにもなるので，開発側では，「ボーカル曲も問題なくできるんだ」と驚いていました。ちなみに，ボーカル曲では，メロディだけでなく歌詞も入れ替えて，聞くたびに違う曲ではあるんだけど，日本語の文章として成り立つようにしています。
　エピソード4は，英語曲の東京の夜は少しクールに，ラスベガスはラップのライブをイメージするなど，いろいろと挑戦できたのもの楽しかったですね。

4Gamer：
　エピソード5は，過去の「ファンタシースター」シリーズのように，ファンタジー色の強い物語や舞台になりましたが，こちらはどんなイメージで曲作りを進めていったんでしょうか。

小林氏：
　戦闘中にボーカル曲を使う方式ができたので，エピソード5やエピソード6でも，このスタイルを続けることにしました。フィールドだけでなく，ボス曲にも使ったのですが，プレイヤーからの評判がよくて，やってよかったと。
 

4Gamer：
　エピソード6は5から物語が続いていますが，音楽的には同じ方向性にしたのですか。

小林氏：
　登場人物は同じ人が多いですが，舞台やエネミーが違うので変えています。機械的なエネミーが登場するエピソード6の雰囲気に合わせて，エレクトロニックというか，EDM（エレクトロニック・ダンス・ミュージック）風な音色を取り入れてみました。また，シンセの音も，これまで以上に尖った方向にしています。
　ただ，ボーカル曲は引き続き入れていく方向でした。“終の艦隊迎撃戦”の最後のセクターで流れる「ALL ARKS」も人気が出ましたよね。「PSO2　RMT」
 

  過去に開催されたシンパシーとライブシンパシーを振り返る

4Gamer：
　オーケストラコンサートの「シンパシー」ですが，ライブのみだった「シンパシー2018」を加えると，今回で4回目になります。復習というわけでもないのですが，まずは，過去の「シンパシー」について，テーマや演奏楽曲の選出基準などを教えてください。

小林氏：
　最初に行ったのが2013年で，これは「ファンタシースター」シリーズ25周年を記念して開催したものです。たしか，セガとしても初めてのオーケストラコンサートだったので，手探りでの実施でしたね。
　演奏した曲は，「PSO2」のサービス開始から1年も経っていないのと，「ファンタシースター」シリーズ25周年記念ということもあって，「PSO」や「ファンタシースター ユニバース」「ファンタシースターポータブル」シリーズの曲をメインにしていました。

「PSO2　RMT」

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