スクウェア・エニックスがサービス中のMMORPG「ファイナルファンタジーXIV RMT」の拡張パッケージ第4弾となる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」(PC / PS5 / PS4 / Mac。以下,暁月のフィナーレ)が2021年11月23日に発売される。その発売に先駆けて,7月11日に「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,暁月のフィナーレベンチ)が公開された。
暁月のフィナーレベンチは,PCで暁月のフィナーレが快適にプレイできるかどうかを,計測した数値により確かめるというもの。これまで,同社は「蒼天のイシュガルド」「紅蓮のリベレーター」「漆黒のヴィランズ」と,拡張パッケージの発売に合わせてベンチマークをリリースしていたが,今回も暁月のフィナーレのベンチマークを用意したというわけだ。「ファイナルファンタジーXIV RMT」
さて,暁月のフィナーレベンチは,これまでのものから変更された箇所がいくつかある。そこで,このベンチマークがどういったものなのかを紹介しつつ,変更点について説明していこう。
ナイトを中心に据えて描かれたベンチマークトレイラー。戦闘シーンではエオルゼアの盟主たちも登場
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
FINAL FANTASY XIV: ENDWALKER Benchmark Trailer
さて,FFXIV暁月のフィナーレベンチは,公開されたトレイラーからも分かるようにロード時間を除くと6分ちょっとで「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(以下,漆黒のヴィランズベンチ)と,長さはあまり変わっていない。その内容は,
・雪原での大規模戦闘シーン
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
全体的に薄暗い中,雪原で戦闘が行われているシーン
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・オールド・シャーレアンの街並み
FFXIV: 暁月のフィナーレではプレイヤー大タウンとして実装されるオールド・シャーレアンもベンチマークでは登場
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・ガレマルドでの大規模戦闘
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
ガレマルドと思しきフィールドで行われる大規模戦闘のシーン
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・サベネア島の様子
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
木々の緑が映えるサベネア島
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・ゼノスとの戦闘シーン
ベンチマークの終盤にはゼノスも登場し,戦闘を繰り広げる
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といった大まかに5つのシーンによって構成されている。これらのシーン中には,各ジョブが新アクションを放つシーンや,アルフィノが賢者として範囲回復アクションを使用する場面,それに敵として登場したゼノスが新ジョブであるリーパーの派手な技を発動する場面もあり見どころは多い。もちろん,オールド・シャーレアンやサベネア島といった新エリアもかなり紹介されており,いやが上にも暁月のフィナーレに対する期待が高まるというものだ。
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
賢者のアルフィノが範囲回復と思しきアクションを使用している場面
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ベンチマークでは,ゼノスが放つリーパーの技をナイトが盾で受け止めている様子も描かれている
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そして,暁月のフィナーレでは,ナイトがメインジョブに据えられているため,ベンチマークトレイラーでもナイトが中心に描かれている。DPSであれば,派手なエフェクトのアクションを放てば見た目のインパクトも大きいが,タンクジョブであるナイトは,それこそベンチマークの中心に置くのはなかなか難しいのではないかとも思った。しかし,FFXIV開発チームによると「ナイトは攻防のバランスが取れたジョブですので,ほかのキャラクターを守るシーン,攻撃に転じるシーンなど,さまざまな見せ方ができました」とのこと。さらに,「群衆の先頭に立つシーンも,ナイトのジョブイメージと合っているため早い段階で構図が決まっていました」ということだ。
ベンチマークはナイトを中心に描かれている
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さて,ベンチマークを見ていて,暁月のフィナーレならではの絵作りが目に留まった。というのも,サベネア島の原色系が強く,色彩がクッキリと表示されている印象を受けたのだ。この点について開発チームは,今回処理の変更はしていないと前置きしながらも,「常にシチュエーションに合わせて環境の調整やテクスチャ一枚一枚の明度や彩度を調整しておりますので,例として挙げていただいたサベネア島に関しても,色彩がクッキリしている雰囲気にあわせて全体調整しているものになります」と,南方地域を表現するにあたり,明度や彩度に手を加えていると説明してくれた。
これはオールド・シャーレアンの1シーンなのだが,背景の木の葉の色彩が明るめに描画されている印象を受けた
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さらに,漆黒のヴィランズベンチでは,アルフィノやアリゼーといった暁のメンバーがベンチマーク中に登場していたが,今回の暁月のフィナーレベンチでは,カヌ・エ・センナやメルウィブ提督,それにアイメリクやヒエンといった各国の盟主などのNPCも登場している点に要注目だ。
この点について開発チームに話を聞いてみると,「ベンチマークトレーラーの内容はゲーム本編のメインストーリーを考慮した仕立てになっている場合が多いです。果たして今回は……」とのこと。このトレイラーから暁月のフィナーレのストーリーをあれこれ想像したくなるところだ。
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
ベンチマークにはラウバーンやアイメリクといったNPCも登場する
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自動キャプチャ機能を新たに搭載。指標における最高評価は15000以上へ変更
暁月のフィナーレベンチの制作にあたり,苦労した点を開発チームに聞いたところ,パッチ5.5と暁月のフィナーレの開発作業と同時進行となってしまう点を挙げた。さらに,ゲーム本編のカットシーンと比べると,ベンチマークでははるかに多いキャラクターを配置する必要があり,それゆえにPCへの負荷が増大し,制作時間を要してしまう点も,ベンチマークならではなのだそうだ。
ちなみに,漆黒のヴィランズベンチがリリースされた際にも,筆者は同じ質問を開発にしているのだが,そのときは登場キャラクターの数を調節するのが難しかったとの回答だった。
そこで,改めて登場キャラクターの数について聞いてみたところ,過去のベンチマーク制作のノウハウを活かして,ゲーム本編におけるオブジェクトの上限数や最大負荷のかかる状況を考慮し,シーンごとに負荷の内容をある程度事前に決めているという。例えば,キャラクターの数については常に上限数を置くのではなく,多数映るシーンと少数しか映らないシーンを使い分けるという具合だ。このように,事前に決める部分と最後に調整する部分を明確に分けて進めたことで,最終的な負荷として想定どおりの内容になったそうだ。
ベンチマーク機能について触れていくと,暁月のフィナーレベンチは,左下にフレームレートがグラフでリアルタイムに表示され,その上にスコアが変動していくという,従来と同じ構成になっている。
その一方で,こうしたUIを非表示にする機能も追加された。これは,ベンチマークをトレイラームービーのように見て楽しみたいユーザーや,店頭でデモムービーの代わりにベンチマークをループ再生したいショップなどで重宝する機能になりそうだ。
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
設定変更のその他のタブには,UIを非表示にする設定が追加されている
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さらに,暁月のフィナーレベンチでは自動キャプチャ機能も追加されている。これは,ベンチマークを実行すると決まった6つのシーンで,画面が自動でキャプチャされるというもの。シーンを選んだ理由については,「自分の作成したキャラクター(※)の顔をアップで見せたい,街が遠景まで細かく表示されている状態を見たいなど,さまざまな希望に応えられるよう,パターンの異なるシーンを選ばせていただきました」と説明した。
なお,このキャプチャされたファイルは,ベンチマークフォルダに保存されるが,UIを非表示にしたり,ループ再生したりというようにベンチマークスコアを計測しない場合は,同機能は実行されず,ファイルは保存されない。
※これまでのベンチマークソフトと同様に,キャラクタークリエイトで作成したキャラクターをベンチマークに登場させられる。
ベンチマークのフォルダに「screenshots」というフォルダが用意されており,そこに自動でキャプチャされたファイルが保存されていく
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自動キャプチャ機能で保存されるシーンはこの6点。シーンを変更したり,ベンチマーク計測中のキャプチャを無効にしたりすることはできない
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そして,これは大きな変更点になるのが,ベンチマークスコアに対する指標が一新された。従来の指標では,スコア3500以上が“快適”,スコア7000以上が“非常に快適”という評価とされていた。これまでの指標は,最初のベンチマークとなる「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア ベンチマーク」から漆黒のヴィランズベンチまで変更されることはなかった。だが,暁月のフィナーレベンチでは,快適の評価がスコア8000以上,非常に快適が15000以上へと変更されたのだ。
この点について開発チームは,「ゲーム本編で72人コンテンツや48人コンテンツなど高負荷なコンテンツが増えてきた状況を踏まえ,より多人数コンテンツを考慮した評価になるように見直しをおこなうことにした」と説明した。たしかに,72人で戦闘を繰り広げるフロントラインや,最大48人で攻略する「グンヒルド・ディルーブラム零式」など,多人数でプレイする高負荷なコンテンツが徐々に増えてきている。そうしたコンテンツで快適にプレイするためには,現在の指標では不十分なケースが存在したという見解だ。
変更された新しい指標では,スコア15000以上が最高評価となっている
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ただし,暁月のフィナーレの基本動作などに大きな変更が入ったわけではなく,描画負荷的にも変わりはないという。なので,これまで快適の評価だったが,暁月のフィナーレで負荷が大きくなりプレイできなくなるといったことがない点は覚えておきたい。
なお,ベンチマークのスコアの算出方法についても聞いたところ,最小フレームレートや平均フレームレートによる単純計算ではないと前置きしたうえで,15000以上のスコアを発揮するPCであれば,平均フレームレートはおおよそ120fps以上になるように調整しているとのこと。
また,最小フレームレートについては,CPUやGPUの種類,解像度や描画設定によって異なるものの,一定以上のGPUを使用している場合,CPU性能がボトルネックとなるケースがあり,最小フレームレートに影響するということだ。
Ryzen 9 5950XにGeForce 3080 Tiを組み合わせたシステムで,最高品質のフルHDで実行した結果。何やら見慣れないミニオンの姿も……
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もう1つ,とくにファイナルファンタジーXIVのプレイヤー間では,3840×1600ドットなどのウルトラワイド液晶ディスプレイの人気が高い。これは,画面の横サイズを広くすることでゲームの画角が広がり,ギミックなどが見やすくなるためだ。
そこで,ベンチマークにおけるウルトラワイドへの対応の可能性を聞いてみた。そもそも現在のベンチマークは,アスペクト比16:9でプレイするプレイヤーが多いため,その比率で計測できるように“シーンを作っている”のだという。
これをウルトラワイドの解像度かつ,同じ尺度で負荷を掛けるシーンを作成するとなると「ベンチマークの制作期間が伸びる」「画面外をそのまま表示すると負荷の少ない場所を映すだけとなってしまい,ベンチマークとして適切ではない」ため,対応の予定はなかったのだという。
一方,「ウルトラワイドをご利用されている方が多いことは認識しておりますので,今後可能性の検討は続けたいです」とも説明しているので,今後の対応に期待だ。
さて,FFXIV暁月のフィナーレベンチでは,従来と同様にキャラクタークリエイション機能も用意されている。その中でも注目したいのが,FFXIV: 暁月のフィナーレで実装予定のヴィエラ族の男性のキャラクターを作成できる点だ。
実際にヴィエラ族の男性のキャラメイクをしてみたが,男性も女性と同様に「ラヴァ」と「ヴィナ」の2つの部族が用意される。ラヴァは肌の色が褐色系,ヴィナは色白系となっている点も,女性と同じだ。ただし,身長については男性と女性とで差異が設けられていた。
女性はラヴァとヴィナどちらも,設定できる身長は178.8~191.4cmだった。しかし,男性は172.2~186.5cmと女性より低めだ。さらに,初期値を比べると,ラヴァは男性が180.5cmで女性が185.1cm,ヴィナは男性が181.2cmで女性が178.8cmだった。つまり,初期値ではラヴァは男性のほうが女性より低く,ヴィナではその逆になっている点は興味深い。このあたりは,ヴィエラ族そのものの設定が大きく関わってくるのだろう。
ラヴァの男性の背の高さの初期値は180.5cm
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一方のヴィナの男性の初期値は181.2cmだ
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男性の髪型は17種類用意されている点は女性と同じ。特徴的な耳も4種類あり,そのうち1つが折れ曲がったタイプである点も,女性から変わっていない。
「ファイナルファンタジーXIV RMT」
髪型は17種類用意されている
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耳は4通りで折れ曲がったタイプもある
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テーマは遊べる要素をできるだけ詰め込む。ベンチマークから新要素を予想する楽しみ
開発チームによると,ベンチマークの基本要素は「FFXIVで遊べる要素をできるだけ詰め込むこと」なのだという。そのため,意図的に負荷を掛けるため激しい戦闘シーンを入れてはいるものの,オールド・シャーレアンのシーンを始めとして,ハウジングやクラフト,ギャザリングといった要素も入れて,戦闘一色にならないようにも配慮しているそうだ。
ベンチマークトレイラーには,話題性が高くなるよう新たなジョブアクションを混ぜ込んでいるということなので,ただPCの性能を測るだけではなく,このベンチマークを見かえして,ストーリーやジョブアクションの予想し,暁月のフィナーレのリリースに心を躍らせてみてはいかがだろうか。