ネクソンが配信中のMMORPG【V4 RMT】(iOS / Android / PC)は,2021年9月24日に1周年を迎えた。今回4Gamerは,そんな本作の日本運営のキーパーソンにインタビューを実施。これまでの1年間で起きた変化や,運営において重要視していること,そして日本版に込めたこだわりといった話を聞いたので,その内容をお届けしよう。
4Gamer:
本日はよろしくお願いいたします。まずはこの1年のあいだ,どのようなコンセプトで運営を進めてきたかをお聞かせください。
黄 珀信氏(以下,黄氏):【V4 RMT】
本作の特徴の1つとして,フィールドでの支配権争いが挙げられます。そして,もう1つ特徴的な部分がありまして,サーバーの枠を超えた戦いがほかのMMORPGと異なる部分だと言えます。
この2つの特徴をより際立たせることをコンセプトにし,これまで運営してきました。このコンセプトが消えてしまうと,ほかのMMORPGと差別化できなくなりますので,非常に気をつけています。
4Gamer:
差別化を図るなかでとくに意識した部分はどういったところでしょうか。
黄氏:
ユーザーのご意見で「フィールドでの支配権争いをメインとしたゲーム性が合わない」という声をいただいた場合でも,なるべくその特徴を消さないように調整してきました。
4Gamer:
具体的にお話しできる調整例があればお聞かせください。
【V4 RMT】黄氏:
例えば,本作はフィールドを支配することによって恩恵を受けられるので,フィールド上でのプレイヤーキル(PK),PvPのような状況が多発しやすいゲームになっています。この部分を苦手とされるユーザーも少なくないため,良い報酬が用意された一部の地域の設定を,PvP可能な地域から「平和地域」というPvPができない地域に変更し,PvPが苦手なユーザーでも遊びやすいように調整しました。
4Gamer:
新クラス,新フィールドなどのコンテンツが次々と実装されてきましたが,フィールドに限らない多人数によるPvPコンテンツも追加されています。こういったコンテンツを追加するときには,PvPを好まない人も参加しやすいように調整されているのでしょうか。
黄氏:
ほかのMMORPGでも共通するのかもしれませんが,日本ユーザーの皆さまの傾向としては,スポーツライクなPvP,大規模戦には抵抗がないようなのですが,キャラクターを成長させるための狩りの途中にフィールドで発生するPKを好まない傾向はあるかと。
「V4」の大規模コンテンツである「ワールドボス」や「次元乱闘戦」などは,いわゆるスポーツライクなPvPに分類されるコンテンツとなっておりまして,それらを好まないというご意見は今のところいただいていないので,多人数で競い合うPvPは楽しんでもらえているのかなと思っております。
4Gamer:
1年間を振り返ってみて,ここがターニングポイントだったといえるタイミングはありましたか?
黄氏:
最初のアップデート日である2020年10月21日に,「ビテン高原」という新規フィールド追加に合わせてフィールドボス「ファルヴィネア」も追加されました。
日ごろ競争相手となっている別サーバーのユーザー同士が協力し,新規追加されたフィールドボスを討伐する流れが発生したとき,MMOの醍醐味が実現できたとして,運用メンバー同士で盛り上がりました。
最初は意図していなかったので,そういうプレイで盛り上げてくれたユーザーに対して感謝の気持ちを伝えたいです。協力して倒すことをユーザー主体でイベント化してくれたことが,運営側としても非常にうれしい部分でした。
4Gamer:
フィールドボスを倒すときのプレイヤーは,チャットを中心に交流して盛り上がっていたのでしょうか。
黄氏:
そうですね。さらにSNS上,Twitter,Discordでもほかの人とつながり,コミュニケーションを交わしながら作戦を立て,討伐してくれていました。
4Gamer:
結果としてフィールドボスは,かなり日本プレイヤーの好みに合わせたようなコンテンツになったのですね。
【V4 RMT】黄氏:
開発側に意図はなくて,ライバルと競い合って倒すというところには終始していたはずです。しかし日本ユーザーの場合は,みんなで一致団結して倒したいという傾向が強いので,そういった流れになったのだと思っています。
4Gamer:
運営方針はどのような路線だったのでしょうか。
黄氏:
日本のユーザーの皆さまは協力プレイを楽しみたいという要望が他地域に比べて強い傾向にありますが,本作はGvEなどの多人数で協力するコンテンツがあまり充実しておりません。
そこで,なるべくギルドのコミュニティの方々が連携を取りやすいような,コミュニティを活性化するためのイベントを用意していきました。あるいは追加されたギルドコンテンツの報酬を手厚くすることで,コミュニケーションのきっかけとしてもらえるような施策を中心に配置していったことが,日本の運営方針の特徴になります。
4Gamer:
そのあたりは日本に限った施策だったのでしょうか。
黄氏:
基本的にコンテンツは全世界共通なので,その中で調整できるポイントはイベントなどになってきます。そこで,ギルドに関連させたイベントを集中的に投下するような配分は,日本独自の施策になってきているかと思います。
もう一点,日本版で注意していたところがありまして,本作はフィールドの支配権を手にしたユーザーに報酬が集中していきます。
それによって,上位のユーザーとそうではないユーザーとの格差が生じ,多くのユーザーのプレイモチベーションを下げてしまう原因となっておりました。その部分については,例えばイベントでも強めの報酬が獲得できるようにして,なるべくそこまで格差が広がらないように注意してきました。
4Gamer:
なるほど。
黄氏:
実際にその意図がユーザーの皆様に伝わっているかどうかは難しいところではありますが,ほかの地域と比べて,日本地域ではそのような形で報酬バランスを調整してきました。
4Gamer:
満べんなく報酬を配ったときに,プレイヤーから反響などはありましたか。
黄氏:
さまざまなご意見をいただきますが,目立つ意見としては,ほかのMMORPGに比べて,いわゆる「課金を迫る圧力は低いんじゃないか」というようなコメントが見受けられました。そういったコメントが多い時期と,そうではないコメントが多い時期が入り混じっていましたが,1年をとおして見ると,ほかのMMORPGに比べて「課金をしなくても十分に毎日成長ができるんじゃないか」という意見はいただいております。
4Gamer:
そういった日本独自のイベントを実施するときに,それぞれのコンセプトなどをはっきりと決めてからやるような形だったのでしょうか。
黄氏:
明確な問題が出ていたので,その問題に対して「このイベントで解決したい」というように協議して,内容を設定していきました。各イベントについては,それぞれの問題点を改善するためのイベントだということを伝えながら,実装していきました。
4Gamer:
運営として意識しているという部分はどういったものになりますか。
黄氏:
そうですね。そのときに差が出てきているアイテムについては「このアイテムだったら課金ユーザーにも受け入れてもらえるだろう」「このボリュームだったら大丈夫だろう」というアイテムをセッティングしていきました。
【V4 RMT】